発電には色々な方法があります。大規模な発電方式についてそれぞれ最悪の事故を想定して比較してみました。
方式 | 想定される最悪の事故 | 影響のおよぶ範囲 | 影響の継続時間 | 影響の収束性 |
水力発電 | ダムの決壊 | ダムの流域 | ダムに溜まっていた水が流れきるまでの数時間 | ダムに溜まっていた水が流れきったら自動的に収束 |
火力発電 | 燃料の火災 | 発電所内 | 貯蔵されていた燃料が燃え尽きるまでの数日 | 貯蔵されていた燃料が燃え尽きたら自動的に収束 |
原子力発電 | 炉心メルトダウン | 半径数10Km以上 | プルトニュウムの半減期は約2万4000年なので数万年 | 何もしないと放射性物質が拡散し続け、事態がより悪い方向に向います。 しかも、「もしも」の場合は、放射線が強すぎて人が近づけず、収束に向けての作業が困難です。 |
大量の放射線を短時間に受けると人間は確実に死にます。
しかし、原発や関連施設に勤めているとか、原爆が近くで爆発したなどの場合以外では、まず考える必要はないでしょう。
普通の人達が注意する必要があるのは、放射性物質を体の内部に取り入れた場合の内部被曝です。
放射性物質は放射線を出して他の物質に変ります。放射性物質の出す放射線にはα(アルファ)線、β(ベータ)線、ガンマ線、中性子線があります。この中で一番影響が強いα線は紙一枚でも防ぐ事が出来るようです。しかし、放射性物質を体内に取り込んだ場合は、放射線を防ぐ手立てがありません。また、放射線の影響は、距離の2乗に半比例して弱まります。しかし、体内に取り込んだ場合は、発生した放射線の影響を直接受けてしまう事になります。
放射線はDNAを傷つけ、細胞をガン化します。もちろん、放射線を受けると100%ガンになる訳ではありません。人間などの動物は良く出来ていて、不良品の細胞を排除する仕組みがあります。しかし、その仕組をすり抜けてガンとなるものが出てきます。放射線の量が多ければ、それに伴って多くのDNAを傷つけ、ガンになる確率を上げます。
ガンは放射線以外の様々な原因で発生します。従って、「このガンは原発事故の放射線の影響だ」とはなかなか言う事はできません。このあたりが難しい所です。(これはタバコの発ガン性と同様の構図)
放射線は直接目に見えませんし、匂いもしません。目で見ただけでは放射性物質であるヨウ素131やヨウ素129と通常のヨウ素とは区別が出来ません。
(ヨウ素131は半減期8日で、生物濃縮の考慮は必要ありませんが、ヨウ素129は半減期約1570万年で、生物濃縮の考慮も必要です。)
放射性物質は、どこにあるのか判らないので、避けようがありません。
知らない内に体の中に入り込み、知らない内に放射線を出し、知らない内にガンが発生する。
ここが放射性物質の怖い所です。
原発で発生した放射性廃棄物はどうなると思いますか?
無害化して埋め立てなどの処理が行われていると思いますよね?
ところが、放射性廃棄物を無害化して、放射線を出さなくする事はできません。
それで、現在どのような事が行われているかと言うと、日本中の使用済み核燃料を一か所(六ヶ所再処理工場)に集め、ウランとプルトニウムを抽出し、残りの高レベル放射性廃棄物をガラス化し固定化した上で地下深い所に埋めようとしています。
ところが、極めて危険な高レベル放射性廃棄物(この廃棄物に20秒弱触れただけでも100%の人が死亡)を受け入れる場所はどこにも無く、未だに埋める場所は決まっていません。
にも関わらず、この高レベル放射性廃棄物は既に1,702本(2010年12月末現在)あり、今後年間約1,300〜1,600本発生すると予想されています。
原発がトイレなきマンションと言われるゆえんです。
ここが原発の問題点です。
参考までに大規模な発電方式についてそれぞれ発電後に出て来るものを比較してみました。
方式 | 発電後に出て来る物 |
水力発電 | ダムに貯まる土砂 |
火力発電 | 燃料の燃えカスやCO2 |
原子力発電 | 極めて危険な高レベル放射性廃棄物 しかも最終処分場も決まらないのに増え続けている |
原発は本当に必要でしょうか?以下にいくつかの観点で考えてみます。
・電気が足りなくなる
原発が無くても足りているとの主張もあります。
また、原発が無い国はいくらでもあります。必ずしも原発に頼る必要はありません。
それに今後人口が減少して来るに従い電気の需要は減り、ますます原発は不要になって来るのではないでしょうか?
・コストが安い
原発が一番コストが安いとの主張もあります。しかし、どうも実際の発電コストは火力と同等のようです。おまけに今回のような「もしも」の場合が発生したら、まったく経済的に割が合いません。また、プルトニュウムの半減期が約2万4000年もありますので、最低でも2万年以上は使用済み核燃料を管理する必要があると思いますが、そのコストも当然含まれていないでしょう(だってそんなの盛り込んだら最初から原発はペイしないでしょう)。従って、仮に原発の発電コストが計算上割安だとしても、単に必要なコストを含めていないだけのまやかしです。
・CO2削減に役立つ
CO2の排出抑制には確かに効果がありそうです。しかし、最近のクリーンエネルギー技術の進歩に伴って、その優位性は揺らいでいます。それにCO2などとは比較にならない程危険な高レベル放射性廃棄物を排出します。
・プルトニュウムが必要
色々問題があるのに、どうして原発が推進されて来たのでしょうか?
私が思うに、核兵器を持ちたい人達がプルトニュウムを得るために原発を推進して来たのではないかと思います。しかし、プルトニュウムについては、既に十分な量のプルトニュウムが日本には有ります。仮に今後日本が核武装したくなったとしても、プルトニュウムを得るための原発はもう不要です。(「日本はその気になれば90日以内に核爆弾を製造し、ミサイルに搭載できる技術的能力を持っている」との主張もあります。)それに、原発が簡単に破壊される事が判ってしまったので、原発を攻撃すれば通常爆弾でも放射性物質を撒き散らすダーティー・ボムと成る事がバレてしまいました。原発は全国に行き渡っていますので、全原発を同時に狙われたら、日本全土が放射性物質に汚染される事になります。国家安全保障上のリスクからも原発は、廃止するべきです。
・お金が儲かる
原発の開発には多額のお金が動くので、そのお金を目的とした人達も原発推進に加担して来たのでしょう。しかし、原発は「もしも」の場合にあまりにも危険過ぎます。
これまで原発で飯を食って来た人達は、今後他の分野に進出する事を考えて下さい。
原子力を研究して来た人は、原発の廃炉や核廃棄物の処理方法を研究してください。それでも定年までに時間があったら、風力発電や太陽光発電などのクリーンエネルギーを研究してください。
原発の建設をして来たゼネコンは、原発の廃炉や核廃棄物の処理に伴う工事をして下さい。または、風力発電所や太陽光発電所などのクリーンエネルギー建設にシフトして下さい。
原発の運用をして来た人達は、原発の廃炉や核廃棄物の処理に従事して下さい。それでも時間が余ったら、風力発電所や太陽光発電所などの保守点検などの業務にシフトして下さい。
「マスコミで専門家や国が安全と言っているから大丈夫じゃないの?」と思う人がいるかも知れません。ではその話は本当に信じて良いものでしょうか?
本当は全て自分で情報を集め、科学的に吟味し、自分の頭で考えて結論を出すのがベストですが、仕事を持つ普通の人には中々難しいでしょう。
では、どうやって信じられる話か、疑わしい話かを判断したら良いのか。
私が取っている方法は、「発言者の経済的背景を考えて見る」方法です。この方法が一番簡単だと思います。
以下にいくつかの例を上げてみました。
原発の専門家 | その方は何で飯を食っているのでしょうか?自分が無職になる可能性のある発言をするでしょうか? |
マスコミ | 電力会社のCMの量を考えると、大スポンサーの意にそぐわない番組は流し難くないですか? (これはタバコ問題でのJTと同様の構図です。JTは未だにマナー広告と称してマスコミに影響力を行使しています。) |
大学教授 | 一見第三者的ですが、寄付講座と言う形で企業のお金が流れている場合があり注意が必要です。 多額の寄付をしてくれている大スポンサーの意にそぐわない意見は言い難くないですか? |
国 | 国や自治体は国民がパニックになって、治安の維持が出来なくなるのを恐れます。従って、国民がパニックになるような事は言いません。 (と言うか、治安維持の為にも言えません) また、官僚は無謬主義で、仮に過去に間違った事をしても、絶対に間違いを認めません。 (そうしないと政策を進められないと言う面も無くはありません。但し官僚は法律には忠実なので、政治家が法案を作ってしまえば大丈夫です。) 原発は国策で推進して来たので、例え間違いだったとしても、間違いを認める事はないでしょう。 過去の公害(水俣病など)、薬害(薬害エイズなど)、アスベストの問題などを頭に浮かべて下さい。 最初に国がどのように対応し、最終的にどのようになったか考えれば自ずと判ると思います。 |
原発推進派 | 単に電気を使うだけの人は、電気がどのような手段で作成されているかあまり気にしません。別にゴミを燃やして作ろうが、人がペダルを踏んで作ろうが気にしません。にも関わらず原発と言う一つの方式を推進したがると言う事は、原発について何らかの経済的な見返りがある人と想像できます。そんな人が言う事は、原発推進に都合の良い事だけを言って、悪い事は隠すに違いありません。 |
原発反対派 | 日本が核武装するのを防ぐ目的で、他国のお金が来ていた可能性は否定しきれませんが、既に核武装するのに十分なプルトニュウムがある今となっては効果はなく、逆に日本を危機に陥れるのが目的であれば、原発推進派にお金をばらまいた方がより効果的だと思います。(そんな必要はないと思いますが。) また、少なくとも国や企業からお金が来るとも思えず、どちらかと言うと経済的には不利。 |
いくら「原発いらない!」と言っても、現状を考えると、直ぐに全原発を止めるわけには行きません。出来るだけ早急に原発に頼らなくても良い環境にして行く必要があります。
その前提としては国民に我慢を強いらず、なおかつ、国としての競争力を強化できるようにして行く必要があると思います。(そうは言っても10年以内には全廃したい)
まず原発を無くすためには以下を行います。
・新規の原発を作らない
・稼働していない原発は廃炉にする
・稼働中の原発は、代りのエネルギーが準備出来た段階で廃炉にする
並行して急いで原発に代わるエネルギーを準備します。
石炭、石油、天然ガスによる火力はCO2とエネルギー安全保障の観点から将来的には避けたいのですが、原発の廃止を急ぐ観点から当面は増設します。
(ちなみ、原発で使用するウランも輸入品なので、エネルギー安全保障の観点からも廃止した方が良いです。)
本命は外国にエネルギー源を依存しない風力発電、太陽光発電、太陽熱発電、地熱(特に高温岩体)発電、潮力発電などです。生物由来の油やガスを基にした火力発電も有りだと思います。とにかく国として補助金でも何でも出して早く開発します。この技術は他の国でも欲しがると思うので、新しい外貨獲得のネタにもなります。
もちろん省エネ・省電力化も進行させます。例えば以下のようなものです。
・家庭
ブラウン管式のテレビについは、エコポイントでほぼ一掃できたと思うので、次は、照明のLED化(これまでの電球の製造・販売の禁止)。エアコン・冷蔵庫の省エネ化と買い替えの促進。太陽光発電(出来れば電池を持った自立型)、太陽熱温水器の普及。高気密、ソーラー住宅の建設。建物の遮熱塗装の使用。自然光を取り入れた設計。
・オフィス、工場、商店、駅、学校など
照明のLED化。太陽光発電(出来れば電池を持った自立型)、風力発電、太陽熱温水器の導入(これらは災害時にも役立つ)。過剰な空調・照明の規制。建物の屋上や壁の緑化や遮熱塗装の採用。外気を利用した空調などの促進。自然光を取り入れた設計。
・ヒートアイランド化防止
道路や駐車場の保湿透水性舗装への転換。校庭の芝生化。(これらは洪水対策にもなります)
色々書いてみましたが、個人で出来る事もありますし、個人ではできないものもあります。
ただ、個人ではできないものについても予算、法律を握る政治家を動かせば可能です。政治家には電力会社からの献金もあるかも知れません。しかし、政治家になる為には、個人からの得票がなければなりません。従って、我々個人が出来る事は、原発を推進する人には投票しない事です。
これまで原発を推進して来た自民党は政権を失い、民主党が政権政党になりました。
我々の投票次第で、国を変える事は可能です。
これからは、その候補者が原発を推進するかどうかを確認の上で投票しましょう。